電子ペーパーが着せ替えパネルの用途に広がる【CES2024】

2024年1月9日から12日までラスベガスで開催されたCES 2024を取材しました。ソニーの自動車など大手メーカーの派手な製品は数多く報道されているので、あまり取り上げられてないネタをいくつか書こうと思います。

最初のネタはカラーの電子ペーパー。電子ペーパーと言えば昔のKindleに代表される、電子ブックリーダーとして使われるものというイメージが高いと思います。最近ではカラーの電子ペーパーも出てきていますが、色の数や発色、そして画面の明るさが暗いことから主流にはなっていません。なおCESの会場でも何社かがカラー電子ペーパーを搭載したタブレットを出展していました。

電子ペーパーを開発しているE Ink社もカラー電子ペーパーは様々なタイプのものを出しており、電子ペーパーの新たな使い道を模索しているところです。その中の1つ「E Ink Prism 3」は文字を表現するものというよりも、色を変えることのできるカラーパネルの用途向けに開発されました。CES 2024ではスマートフォンメーカーのInfinixがこのE Ink Prism 3を背面に採用したスマートフォンのモックアップを展示していました。

Infinixはこの技術を「E-Color Shift」を名付けています。細かいパネル状にE Ink Prism 3を張り付けることで、アプリから簡単に背面の模様を変えることができるというもの。文字表示は難しいものの簡単な記号などならパネルのサイズを小さくすれば表示できるかもしれません。そこまでやらなくともその日の気分に応じてデザインを変えたり、あるいはSNSの通知で背面の色が一瞬で変わったら面白そうです。

電子ペーパーは一度通電すれば、あとは電気を切ってもその状態が保持されます。つまり色やパターンを変えるときだけ電圧をかければいいのです。常時点灯させておくという概念がないので省電力であり、スマートフォンのバッテリーを消費することもありません。現時点で色は8色のみですが、それでも十分な表現力はあります。

電子ペーパーを色を変えるパネルとして使うアイデアは、すでに1年前のCES 2023でBMWが「i Vision Dee」で披露しています。BMWはさらにその1年前、CES 2022では白黒で色変する「iX Flow Featuring E Ink」も発表しており、電子ペーパーの新たな可能性はスマートフォンのような小型機器だけではなく、自動車のような大型製品にまで広がろうとしているのです。

白黒の色変化でデザインを変える製品はCES 2024の会場に他にもありました。家電メーカーのKohlerのデザイントイレ「NUMI 2.0 E-INK」で、スクエアをベースにしたボディーに電子ペーパーを貼り付け、デザインを変えることができます。

この製品はスマートフォン連携もできるスマートトイレなので、例えば便座の温まり具合の状態を電子ペーパーの色を変えて表現する、なんてこともできるかもしれません。また朝は明るい色、夜は暗い色にしてユーザーの目覚めや睡眠を促す、といった機能も持たせることができるでしょう。

電子ペーパーの応用が広がれば技術も進み、より自然な表示で目にやさしいディスプレイの実現に一歩一歩近づくはずです。InfinixにはE-Color Shiftの実用化をぜひ早く進めてほしいものです。

2024年1月9日から12日までラスベガスで開催されたCES…