カラー画面も進化、電子ペーパー端末が楽しくなってきた【IFA2023】

E Ink社の電子ペーパーを使った端末も種類が増えています。業界大手のONYXの「BOOX」シリーズは日本でもSKTなどの代理店が販売しており、海外で発表された新製品が日本向けにも投入されています。筆者も過去に何製品か購入したことがありますが、数年前のモデルは画面の反応速度が遅かったりCPUも低速で全体のパフォーマンスが低かったりと、あまり実用的ではありませんでした。2023年9月にベルリンで開催されたIFA2023の会場で見かけた製品はかなり快適に使うことができ、スマートフォンのお供に持ち歩くのに良さそうな製品と感じました。

筆者が気に入ったのはスマートフォンサイズの「BOOX Palma」。ONYXは過去に電子ペーパー搭載スマートフォン「E43」を2014年に発売したことがありますが、それ以来の製品になります。とはいえBOOX Palmaの通信機能はWi-Fiのみで、SIMカードは使えず単体通信はできません。スマートフォン型のWi-Fiデバイスです。

電子ブック端末として使うなら画面の大きいタブレット型のデバイスのほうが便利でしょうが、手ぶらで出かけたいときなど持ち歩くのは面倒です。BOOX Palmaは画面サイズが6.13インチ、本体サイズは159 x 80 x 8mm、179gと小型軽量。ポケットにも楽に入ります。縦型コミックを読むのにも向いており、スマートフォン感覚で使えます。ディスプレイはE Ink Carta 1200を採用、1648 x 824ピクセルと解像度も高めです。

わざわざスマートフォン以外にもう1台デバイスを持ち歩くのか、という疑問も無きにしもあらずですが、書籍や漫画をよく読むのならば専用端末があったほうが便利かもしれません。価格も日本では5万円を切っています。

コストを考えるとWi-Fiのみ対応にした理由はよくわかります。しかし小型のデバイスなだけに、単体通信できるとより便利になるだろうと思いました。また今やeSIMが実用化されているので、SIMトレイを備える必要ななく基盤でSIMカードへの対応も可能です。初期のアマゾンのKindleのように低速回線対応のSIMで電子書籍をダウンロードし放題、のようなサービスをONYXが提供したらより注目される製品になるんじゃないかと思うのですがどうでしょう。

タブレット型端末はカラー画面の製品が展示されていました。「Onyx BOOX Tab Ultra C」は電子ペーパーはモノクロという常識を打ち破るモデルです。E Inkのカラー電子ペーパーも年々改良が進んでおり、Onyx BOOX Tab Ultra Cが搭載する「E Ink Kaleido 3」は4096色対応、彩度も前モデルより3割アップ、さらにフロントライトも青色光を減らした「E Ink ComfortGaze」を採用するなど、自然なカラー表現に一歩近づいています。

キーボード付きカバーとスタイラスでノートPCのように使えるのも便利。パワポの資料作成などカラーのイラストなどを扱うのならそこそこ使える感じがします。実際にタイピングや画面への手書きを行ってみましたが、全体のパフォーマンスは十分実用的。電子ペーパー画面の書き換え時の反応も慣れれば気になりません。

1600万画素カメラも搭載しているので写真やメモ撮りができるのも便利。写真の表示はまあまあというレベルですが、もちろん保存された写真は普通のカラーJPEGとして十分使えるもの。SNS投稿をここから行えます。日本での価格は約9万円。

7.8インチカラー画面の「BOOX Tab Mini C」は手軽に持ち運べるカラー電子ペーパー端末。本命はこれかなと思える手ごろなサイズにペン入力対応で、メモ帳代わりにも使える製品です。こちらも電子ペーパーは「E Ink Kaleido 3」を採用しています。

本体サイズが194 x 136.5 x 8.3mm、308gと片手で持っても苦にならず、画面もカラーなので電子書籍はもちろんのこと、グーグルカレンダーなどの色表示もしっかり判別できます。カラー電子ペーパーのカラー表示はまだ4096色ですから液晶や有機ELと比較するのはそもそもあまり意味が無く、「色のついた紙」と考えるべきでしょう。そうであれば子供向けの絵本などを表示する教育端末としての用途も十分ありでしょうね。

ちなみに中国でカラー電子ペーパースマートフォンを出していたハイセンスは学習アプリを入れるなど教育端末としての用途展開を図りました。また反射式液晶に近い表示ができるTCLの「NXTPAPER」ディスプレイを搭載した端末も教育向け展開が行われているようです。

BOOX Tab Mini Cも電子書籍や電子コミック用、さらにスケジューラーなどのアプリ利用など、用途を限って使うのであればスマートフォンのお供に十分なるのではないかなと思います。日本での価格は約7万円です。

E Ink社の電子ペーパーを使った端末も種類が増えています。…