新江ノ島水族館に深海調査船「しんかい2000」に会いに行く

はじめまして。新人ライターの赤井清水(あかいきよみ)です。

私は生き物ではサメが特に好きでサメに会いに水族館によく行っています。

今回は神奈川県藤沢市にある新江ノ島水族館で静態保存展示されているJAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)の、日本初の本格的な深海の有人潜水調査船 「しんかい2000」を中心に紹介します。

今年で20周年、「えのすい」の愛称で親しまれる新江ノ島水族館

新江ノ島水族館は小田急線片瀬江ノ島駅から徒歩6分、江ノ電江ノ島駅から徒歩14分の片瀬海岸に位置しています。2004年にグランドオープン、今年で20周年を迎えるこの水族館は「えのすい」の愛称で親しまれています。

新江ノ島水族館

入場料金は一般大人2800円ですが、電車代とセットの割引チケットをはじめ割引や優待券などもあるのでお得に入館したい方は事前に探してみるのもお勧めです。

また年間パスポートが5600円(一般入館料金の2回分)で発売されているので、1年間に複数回行ける人は年間パスポートを買うのも手です。

筆者の経験でも初回訪問時はじっと寝ていた生き物が2回目は泳ぎ回っていたり、同じ水族館、同じ生き物でも行く日や時間帯(午前中と夕方など)で異なった姿を見せることも多く、何回も訪問するとより理解が深まることは請け合いです。ちなみに筆者は藤沢市のPayPay20%還元の際に年間パスポートを購入しました。

館内の展示解説などから新江ノ島水族館はレジャー・エンタメ面の他に教育・研究的な面にも力をいれていることが伺えます。約8000匹のマイワシをはじめサメやエイ、ウツボ達など約100種類2万匹の魚たちが暮らす水深6.5m 容量1000トンの相模湾大水槽は圧巻です。

深海調査船「しんかい2000」の模型や実機を展示

そして今回の記事でお勧めしたい展示は、相模湾大水槽の先にあるゾーン。

深海Ⅰエリアではこの後のエリアで展示されているしんかい2000が海底のチムニー(熱水噴出孔)を探索する姿が模型で再現されています。

そして深海Ⅱエリアにあるのが「しんかい2000」の実機展示。

「しんかい2000」は深海2000mまで潜水できる日本初の有人の本格的な深海調査船として1981年に完成し、2002年までに1411回の潜航を行い2004年に引退。2012年からここ新江ノ島水族館で常設展示されています。

2017年には一般社団法人日本機械学会による「機械遺産」に2021年には公益社団法人日本船舶海洋工学会による「ふね遺産」にも認定され、 今でも現役当時の運航メンバーによる公開整備も行われているそうです。

以前(2023年10月)の様子

以前は側面のパネルの一部が外されて内部の機器が見れるようになっていましたが、2024年4月時点ではパネルは全て取り付けられています。

探索中の様子を再現して展示

「しんかい2000」の探索により多くの新種の深海生物を発見した他に、1993年には北海道南西沖地震の震源域付近の海底の地震の影響による変化を調査記録するなど、地震のメカニズム解明の一助となる調査にも活躍したそうです。

コクピット部の実物大模型

全長9.3m、空中重量24トンとそれなりに大きそうに見える「しんかい2000」の機体ですが、人が乗れるのは前部の直径約2.2mの球体内部のみ。驚かされるのは3名の乗員のうち椅子に座れるのは1名だけで他2人は床に寝そべる形になるとのこと。

1回の探索はおよそ8時間。起きていながらもずっと横になったままというのはそれはそれで大変そうです。ちょっと横になるつもりがそのまま昼寝をしてしまうこともよくある?筆者には途中で眠くならないのかも心配です。

後尾の様子

機内にトイレがないために必要な携帯トイレ、使われている浮力材の見本、潜水用のバラストなども展示されています。

安全上、機体自体は水に浮く構造になっていて、バラストの重さで潜水。バラストを切り離して浮上して帰還するという仕組みだそうです。

ちなみにトイレは女性が搭乗する際は紙おむつを着用するそうです。太陽光が届かない深海部は暗くて寒い場所、狭い搭乗空間といい深海への旅の過酷さを感じますが、未知の深海への旅は憧れもあります。

しんかい2000の支援母船「なつしま」の模型
壁面展示で世界の深海調査船を紹介

日本では現在、しんかい2000の後継のしんかい6500が6500mの大深度まで潜れる深海調査船として活躍していますが、こちらも完成から既に30年以上。後継機のしんかい12000は計画段階でストップしているようで今後が心配になります。

現役の調査船しんかい6500による調査や水中ドローンなども展示

この深海Ⅱエリアでは「しんかい2000」の実機の展示のほかにJAMSTECや新江ノ島水族館による研究や現役の調査船しんかい6500による深海探査などがパネルや映像で紹介されている他に、水中ドローンも展示されておりこちらも注目です。

1階にある深海Ⅱエリアから外に出るとウミガメの展示エリア。

亡くなって解剖されたアオウミガメの腸などから採取された、ビニール袋や網などの標本が展示されています。

アオウミガメは雑食性なもののクラゲを好むため、海面に漂うビニールをクラゲと間違えて食べてしまい、排出されず腸閉塞を起こした可能性が考えられているとのことです。

昨今海洋に流出するレジ袋やプラストローなどプラスチック製品が海洋生物に与える影響、またマイクロプラスチックとなり巡り巡って人体に取り込まれてしまう可能性も注目されつつあります。

ここ数年、全国的にレジ袋の有償化やプラストロー配布の廃止などが行われ不便を感じることもありますが、プラスチックを削減することが海洋生物達や自然環境、ひいては私たちの暮らしや健康を守ることに繋がるという背景知ることも意義があると思います

水族館の企画展示やイベントに関連したワークショップも実施

さて最後に新江ノ島水族館に併設されている「なぎさの体験学習館」で開催されているワークショップを紹介します。

体験学習館の1階では期間ごとに水族館の企画展示や季節のイベントに関連した、30分程度で出来るちょっとした工作を行うワークショップを行っています。今回筆者が訪問した4月17日は開館20周年を記念したロゼットの製作体験をおこなっていました。

受付で代金(150円)を支払い、簡単な説明を聞きながら製作するロゼットの色や生き物の種類を選び、必要な材料を受取り製作にチャレンジです。

受け取った材料。各席に作り方の説明シートが用意されています

筆者は今までに何回か参加しましたが、子供向けと思いきや意外にデザイン力を要求されることもあり、途中で一時席を立ち受付にある見本を覚えて製作に戻ることも。自分で好みにアレンジできる幅もあり、大人も子供も楽しめる楽しい体験です。

完成したツマグロ(サメ)のロゼット

作品を壊さないように持ち帰るのに難儀することがあるので、持ち帰り用の袋や箱は事前に用意しておいた方がよさそうです。

こちらは昨年(2023年)春、サメ展を開催していた時に筆者が製作したサメのカードスタンド。

このワークショップは主に土休日は予約制、一部を除いた平日は開催時間中に随時受付。参加費用は制作内容により無料~数百円程度の材料費のみ、特に平日は行ったその場で参加出来ることが多いのでお勧めです。水族館訪問の記念や思い出になることは請けあいです。(詳細は水族館のWebサイトでの確認をしてください。)

さて今回は新江ノ島水族館を「しんかい2000」を中心に紹介しました。

VRやAI技術たけなわな現代の時代でも、人間にとって深海は宇宙よりもたどり着くのが難しい未知の領域と言われています。

その中で海に囲まれた日本の深海探索に大きな貢献をした「しんかい2000」の実機が安住の地を得て静態保存されているのは、深海探索の実際や技術史を伝える面でも大いに意義があると思います。

みなさんも「しんかい2000」に会いに行きながら、奥深い海の世界に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

はじめまして。新人ライターの赤井清水(あかいきよみ)です。 …