「VIVANT」のドラムはスマホの達人!? スマホのフリック入力速度を計算
by Balshark
9月17日に最終回を迎えた日曜劇場「VIVANT」。原作・演出を担当する福澤克雄氏の集大成として過去に彼の作品に携わった俳優をはじめ、さまざまな個性的な出演人、そしてその脚本の面白さもあいまり、最終回の平均視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ・以下同)は世帯19.6%、個人12.9%と番組最高の数字で有終の美を飾りました。
そんな中、編集長である松尾氏からこんな提案をいただきました。
「バルシャークさん、VIVANTネタ書きませんか?」
さて困りました。確かに筆者もVIVANTは見ていましたがテック的に扱う要素が思いつかなかったのです(テック的な矛盾はいくらか見受けられましたがそれについては別の機会にしたいと思います)。
一先ず、再度VIVANTを見直すことにしたところ、松尾氏がパーソナリティを務めるテック系Podcast backspace.fmのマネージャーであるokita氏からこんな事を言われました。
「ドラムのスマホの入力速度ありえないほど速くないですか?」
ドラムとはVIVANTに登場する人物で、俳優・阿部寛が演じる公安の野崎守をサポートするモンゴル人であり、その最たる特徴といえば会話が全てスマホの音声読み上げであるという点です。
言われてみれば、物語の序盤は多少文字入力を行うシーンが差し込まれており、会話への応答速度も納得が行くものでしたが、佳境になるにつれほとんど肉声での会話速度に等しい速度だったのです。
そこで、本記事ではとある論文を元に公安のサポート役であるドラムのスマホの入力速度がどれほど速いかを考えていきます。
歩きスマホが反応時間へ与える影響
まずドラムの状況を鑑みるに、いわゆる常時「歩きスマホ」状態にあるのではないかと考えられます。そこで歩きスマホが反応時間等に与える影響について、一般社団法人日本人間工学会が発行する「人間工学」にて関連する論文を調査しました。そして今回注目したのは51巻の特別号に掲載された東京都立産業技術高等専門学校および産業技術総合研究所の研究グループにより書かれた「歩きスマホが反応時間および歩行動作に与える影響」という論文です。
本研究では歩きスマホが歩行状態に与える影響について調査するため、複数の被験者に対しトレッドミル(ランニングマシン)上でスマホのメモアプリを用いて名前や住所などの個人情報の入力作業を行ってもらいながら、被験者の2メートル前方に設置されたLEDの点灯に気がついた場合に手元の応答スイッチを押すという実験を行います。なお、対象被験者は心身ともに健康な学生12名としています。以下は被験者の通常歩行速度と70%歩行速度の場合についての反応速度を測定した結果です。

実験結果より、歩きスマホを行う事で通常歩行速度では約3.8倍、70%歩行速度では約2.3倍の前方注意反応時間に差が出ました。ドラムは歩きスマホ状態(前方注意速度が低下した状態)ですら周囲の人の通常歩行状態と同じ速度で生活しているように描写されているため、仮に前方注意速度と反応速度を同等と考えた場合、速度が低下する前のドラムの反応速度は少なくとも私たちより約2.3~3.8倍速いことになります。ここではこれをドラムの真の反応速度とします。
次に情報システム学会にて青山学院大学より発表された論文に記載された
スマートフォンを 2 年間以上保持しており、1 日 1 時間以上使用しているフリック入力の習熟者(文字入力の際に入力画面を注視しない人)は、1 分間で約 100 文字から 150 文字入力することができる人が多い。
文字入力速度測定ツールの開発による大学生のキーボード入力速度の実態調査
という考察内容から、ドラムのスマホの入力文字数を計算します。周囲への反応とは異なりスマホへの文字入力に集中している場合は反応速度が低下しないと考えられ、文字が入力されていると認識して次の文字を入力するという反応速度がドラムの真の反応速度レベルで行われるならば彼は1分間で230~570文字を入力しています。就職活動等で書くであろう自己PR欄がおよそ400文字程度なので、ドラムにかかればものの数分で自己PR文が完成することになります。
終わりに
と、今回はとても狭い話題に着目して論文の情報を元にドラムの反応速度や1分間の入力文字数について考えてみました。もちろん、今回参考にした論文以外を参照することでより正確に彼のスマホの入力速度を見積もることができるかと思います。結びに、皆さんもスマホ依存症にはお気をつけて。
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