募集から数分で埋まる人気イベント、古代の技術「縄文土器」の作り方を親子で学んできた
by 中山のりお

「縄文土器、弥生土器、どっちが好き…?(「狩りから稲作へ」/レキシ)」でおなじみ、2大土器のひとつ、縄文土器。その名の通り「縄」を使って模様を付けていることから呼ばれたというこの土器を、親子でつくる機会に恵まれました。そこには、教科書からは伝わらない意外な作り方と、出土作品へのリスペクトが深まる様々な体験が。
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Toggle募集枠がすぐに埋まるほどの人気イベントです
縄文土器の作り方を教えてくれたのは、さいたま市大宮区にある、さいたま市立博物館。ゴールデンウィークの特別企画として催されたこちらのイベント、30名の枠は募集からたった数分で埋まってしまったとのことで、なにげに土器ファン、多いのかも知れません。予約の電話、つながって良かった…!

今回は小学生を含む親子向けの体験会ということで、イベントは縄文土器の学習からスタート。出土した本物の土器を目の前にいろいろな説明を受けます。まだ土器を習っていない低学年の我が家でしたが、他の博物館で見たこともあったので、興味深そうに聞いていました。バラバラの状態から出土したものを、立体パズルのように組み立て直すのとか、ちょっと面白そうですよね。学芸員の方でも、取り扱い中に壊れてしまい、パズルしなおすことがあるのだとか。
縄文土器の意外な作り方とは?
簡単な土器についてのレクチャーの後は、いよいよ土器作りに突入。なんとなくのイメージは、土をこねて、回転させながら深みを出して、最終的には壺型にして…みたいな印象でしたが、実は作り方、全く違いました。
実際の縄文土器の作り方は、底面を作ることからスタート。手渡された「アルファクレイ」という彫塑用土粘土を分割してこね、縁の厚い小さなお皿状のものを作り、それを底とします。

次に作るのは、ドーナッツのような輪っか。なんと縄文土器は、底面の縁にこの輪っかを積み上げていくことで形状と高さを作り出しているのです。これを「輪づみ(わづみ)」と呼ぶそう。よく見るようなすり鉢状の土器を作りたい場合は、この輪っかを少しずつ大きくしていくことで、最終的に口の広い形状へと仕上げる必要があります。

輪っかを積み上げていくということは、縁がまるまる接合面になるということで、ここを上手に埋めていくのが一苦労。油断すると粘土が乾燥して割れてしまいますから、そうならないよう保湿も怠らずに、黙々と輪っかを積み上げ、接合していきます。

なぜ輪づみが採用されたのか?
ここで少しだけ疑問が。なぜ縄文土器は、輪っかで積み上げる方法(輪づみ)が取られたのでしょうか?
現在の説では、ろくろのような仕組みがない時代でも、大型で壺状の土器を作りやすい手法だったからと考えられている、と説明がありました。厚みもある程度均一に保てるということで、強度にも影響したそうです。確かに輪をたくさん作ることができるなら、大きな土器もそこまで難易度高くなく作ることができますよね。今回の企画のように、レクチャーを受けたばかりの小学校低学年の子供でも1時間くらいで土器を作ることができましたので、誰もが土器を作れる方法を模索し編み出された、作り手に優しい手法だったのかもしれないとも感じました。
輪っかを積み上げ整形したた後は、お待ちかねの装飾タイム。事前に名前通りの「縄」や竹串、竹ひご、さらには貝殻などが用意されており、これを粘土にギュッと押しつけていくことで文様を作っていきます。個性が発揮される瞬間ですね。
土器の装飾にも流行がある
面白い逸話としては、縄文土器も時代によって装飾の流行り廃りがあったとのこと。おおよそ1万年続いた縄文時代のうち、初期は質素な装飾であったものが、中期に向かってどんどん手の込んだ装飾となり、後期はまた実用重視の質素なスタイルに戻っていったのだとか。なぜそうなったのか?なども考え出すとなかなか深いですよね。
さて、そんなことをしていると目の前の縄文土器が出来上がってくるわけですが、実はまだ「完成」とはなりません。そう、今回は焼かないで乾燥させる土器であるため、ここから1週間ほどは自宅にて乾燥させる工程を経なければならないのです。言われてみれば、ですが、まだまだ柔らかい状態ですので、これを持ち帰るのが最大の難所かも…と感じました。車で来て良かったなという感想しかないですね。

古代のアーティストをリスペクト
作ってみて本当に強く実感したのですが、教科書に載っていたり博物館で目にする縄文土器、あれを作ったのは間違いなく当時のアーティストや職人ですね。輪づみで上手に形を作り、美しい装飾を施すの、めちゃくちゃ難しいです。きっと当時も土器の達人がおり、弟子がいたりして、○○派みたいな流れがあったのかもしれませんね。シンプルでできることが少ないがゆえに、あそこまで差分を出した「作品」を作れるのは、本当に尊敬しかないですよ。

名前も良く知っているし、教科書や博物館でもよく見かける縄文土器、作ってみないとわからないことがたくさんありました。改めて理解が深まった古代の技術に、ちょっと感動しちゃったな。
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