バーチャルと現実が繋がった「バーチャルマーケット2023リアルinアキバ」がVRメタバースの理解を促す
by 武者良太(R)
7月29日〜30日、東京・秋葉原のベルサール秋葉原で「バーチャルマーケット2023リアルinアキバ」が開催されました。これはVRメタバースと呼ばれるサービスの1つであるVRChatなどで開催されている「バーチャルマーケット2023 Summer」と連動したイベント。企業ブース、個人ブースともに多くの人が訪れていました。
時間帯によっては入場制限がされるほど、です。
リアルイベントは初めてとなるバーチャルマーケット

バーチャルマーケットは2018年に初開催され、「バーチャルマーケット2023 Summer」で10回目。当初はVRChatなどで使うアバターやバーチャルファッションなどを販売する個人ブースで構成されていましたが、現在は数多くの企業が協賛してゲーミングPCやホビーグッズ、地域やアパレルなど、さまざまな商品がアピールされる場となっています。
今回はバーチャル空間だけではなく、現実のイベントスペースでも開催。バーチャルと現実を繋ぐ、さまざまな施策が取り入れられていました。
多くの体験コンテンツが揃っていた企業ブース

AVATAR MEETS(アバターミーツ)ブースでは、足元まで広がっている巨大なスクリーンにバーチャル空間を投影。リアル側ではVRヘッドセットやトラッカーを使わずにバーチャル空間内で全身が動かせる独自のフルトラッキングシステムを用いており、意識せずにバーチャル空間へ足を踏み入れることが可能です。
マイクに向かって話しかければ目の前のアバターが言葉を返してくれるし、身体を動かすカジュアルゲームで一緒に遊べることから、没入感が強烈。アバターが3D CGキャラではなく、息遣いを感じる生身の存在であるといった感覚も得られます。

こちらは会場内を巡回していたバーチャルアバターロボット。ディスプレイにVTuberの姿が映し出されているだけではなく、カメラ&マイクで会場内の様子をVTuberにも伝えることが可能。来場者が「かわいい」と呟くとVTuberが「ありがとう!」と反応し、「え、喋ることができるんだ!」という驚きが広がっていました。

「VRショットBAR “シーサイド~Seaside~”」ブースでは、ソニーの空間再現ディスプレイ ELF-SR2が設置され、注文したメニューの3D CGモデルを立体で見ることができる上、ソニー独自開発のにおい制御技術による香りの提供もされていました。
展示ブースが一階のオープンエリアであったために香りはすぐ風に流されてしまったものの、視覚・聴覚に加えて嗅覚も刺激する展示内容は新しい体験といえます。

VR180動画が撮影できるVRレンズこと、RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEで撮影した動画の体験コーナーがあったキヤノンブース。同じコンテンツはバーチャルマーケット2023 Summerでも体験できたが、多くの観光客が集まる秋葉原という場所もあって、初めてVRヘッドセットを装着し、初めて立体視映像を見る来場者が集まっていました。
バリエーション豊かな個人クリエイターブース

地下フロアにあったのは、個人サークルやコミュニティのサークルブース。こちらのQuestラジオ体操部は、VRChatで毎朝7時30分から8時まで開催している、ラジオ体操イベントコミュニティ。

イベントの終了時に登場するスタンプが実際に制作されており、今まで参加したことがあるユーザーにとっては馴染みのあるアイコンゆえに、まるでOFF会のように盛り上がっていました。

VRChat内で撮影された映像作品が上映されていたのが、VRCムービーアワードブース。一見するとUnityなどのゲームエンジンを用いて作られたCGアニメーションと思えますが、実はアバター姿のアクターがさまざまな役を演じ、撮影し、編集された作品のみ。
絵が描けなくても、アニメ制作の技術がなくとも、願い通りの作品が作れるVRChatの可能性を展示していた、と言えるでしょう。

勇者技術研究所のブースにあったのは、リアルロボットのファイバリオン。筆者がうかがった時は休憩中でしたが、このロボット、動くんです。VRChatのワールドに置かれたロボットの操作システムと連動しており、遠隔操作で動かせるのです。

VRChatのログを読み取り、現実のモーターをコントロールして動かします。ロボットの遠隔操作デモは独自アプリでは可能でしょうが、VRChatのシステムを用いて実施したのは世界初ではないか、とのことでした。現実側のロボットを動かしてVRChat側のロボットに反映させるデモも実践済み。バーチャルと現実のインタラクションを進めています。
誰もが馴染みやすいコンテンツが理解を促す

メタバースと呼ばれる世界の理解が進まない大きな要因の1つが、バーチャル空間の中が見えてこないこと。キャプチャ画像ではPS3時代のグラフィックかと思えるバーチャル空間が多く、低解像なコンテンツに興味を持てなかったり、VRヘッドセットを装着しなければ体験できないコミュニケーションがあることから、自分ごととして捉えられないのは仕方がないといえます。難しそうだ、と感じてしまう人も多いようです。
しかし大規模VRイベントを手掛けてきたHIKKYが開催した「バーチャルマーケット2023リアルinアキバ」では、エンターテインメントに寄せたコンテンツでバーチャルと現実を繋いだことで、VRが初めての人も、慣れ親しんだ人も、誰もが両方の空間のつながりを楽しんでいました。日本に訪れたインバウンド観光客も笑顔でVRを体験していました。
老若男女が構えず、気軽に体験できるコンテンツと場所があってこそ、メタバースの理解が促されていく。バーチャルマーケット2023リアルinアキバはそう感じるイベントでした。
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